知っているということ、専門性ということ。

県立大野病院事件の公判ももう10回。関係者の方々お疲れさまです。公判情報は他のサイトに詳しいので省略。今回は、宮崎の先生がいい仕事されたようですね。
一罰百戒の効果も狙いつつ逮捕起訴されたという噂もあるこの事件だが、一罰崩壊につながっているのはご存知の通り。こういうのは、本当は悪いやつなんだけど放置されてたのを召し捕るから効果があるんであって、普通の、というよりどちらかというと優秀な部類に入ると思われる方を召し捕ってしまったからイカンのだな。私は間違いなくボンクラな方に入る元産科医であるが、この状況で私なら子宮全摘までたどり着けたかといえば、難しかっただろうな。そんなわけで、ちゃんと探せば本当に悪そうな人、見つかると思うけど。あ、ムリに探さなくていいです。
医学は一応、ある種の専門分野であることは同意して頂けるところだと思うのだが、司法という枠組みがある以上、現在では門外漢の司法関係者によって裁かれるのは仕方ないところだ。ただ、医療の問題をテレビとかで面白おかしく取り上げて、それこそ専門家でも何でもないがテレビでは影響力のある人とかが何か発言したせいで、翌日の外来が大混雑になったり、医師が患者に一生懸命説明してるのに、「でもテレビではこういってました」とかいう話になるのは、専門性の冒涜という気がしないでもない。それは、テレビが悪いとかいうよりも、国民性とか、教育とかいう問題にもなるので、根は深い。勿論、医療側にも、専門的なことをわかりやすく説明することが必要になってくるし、そういった努力は必要だが、説明に時間をかける必要があって、その時間を捻出できないという点がジレンマである。
県立大野病院事件の公判後の記者会見で、検察側のコメント。

公判後、福島地検の村上満男次席検事は「カルテや麻酔記録など検討した資料が不十分で、池ノ上教授の鑑定に客観性があるとは言い難い」と述べた。

これについて、「専門性の冒涜だ」というコメントをするつもりでこのエントリを立てたのだが、公判の詳細を読んで、むしろ池ノ上教授が客観的なデータばかりを元に鑑定を組み立てたことを理解したので、検事としてはこういうコメントしか出せなかったのだ、と思うとなんだかカワイソウな気もしてきた。早く裁判止めちゃえばいいのに。メンツがあるからムリかな。