心強いメッセージ

古い記事で恐縮ですが。たまたまWeb上で見つけたもので紹介。

まあ悪くない記事だが、危険なところもある。

 佐久総合病院・小口医師は、以下のように、多くの妊婦に心強いメッセージを送った。
「佐久病院は年間1000件、現在の倍近い分娩規模になる。医師は4人のままです。医療水準も低下し、サービスも低下するでしょう。それでも、引き受けます。救急車も断りません。私たちに力を貸してください。お産は産科医がするものではないのです。地域の配慮・家族の助言、健やかな妊婦さんが安全で自然なお産を守るのです」  

・・・全然心強くないんですけど。どっちかっていうと、自爆予告というか、特攻隊みたいな悲壮な勢いを感じますが。「低下し、低下し、でも引き受けます、断りません」に心強さを感じる記者のセンスが微妙だな。むしろ怖い感じがしますけどね。この地域は、この後どうなったんでしょうか。
以下は記事。長いよ。

妊婦さんを見捨てない:地域での出産守ろうと長野県・佐久で医師、住民がシンポジウム
 長野県東部の佐久地域で9月22日、「周産期医療を考える――佐久地域のお産、安心ですか?」と題した医師会主催のシンポジウムが開かれた。
 このシンポジウムには医師だけでなく助産師、行政、住民も参加、医師集約化などによって崩壊寸前の地域医療を守ろうという、熱のこもった会合になった。
 長野県東部地域(東信 ※)――神奈川県と同じくらいの広さだが人口は約42万人――で、すでに5つの施設が分娩の取り扱いを止めている。いまなお、分娩を取り扱っているのは3つの病院と、1開業医院、1助産院だけだ。
 全県的な医師不足のなか、信州大学産婦人科医局からの派遣医師の配置見直しが進み、
佐久市国保浅間総合病院の産科医師3人にも、今年、大学から撤収の指示が出た。
 しかし、2人の医師は大学を辞めて地域に残ることを決心した。来年4月からは、この2人体制で分娩の取り扱いを存続させる、という。
 シンポジウムで、浅間総合病院の現状が報告された。その要旨を紹介しよう。

高橋医師
「年間分娩件数520件に医師3人の体制です。現在でも当直が月に12〜15回、当直明けも普通に朝から外来、午後手術の通常勤務です。緊急手術があると外来はストップ。予約制なのに待ち時間が長くご迷惑をかけています」

仲井副院長
「産科医は夜中の2時に帰ってきて朝の5時に出勤していきます。ずっと宿舎でそれを見てきた。こんなことをさせていては続かない」

 来年の4月からは、病院に残った産科医師2名だけの体制になる。大学からの派遣ではないので、もし片方が倒れても補充が来ない。倒れたらそれまで。医師たちが過労で倒れないための仕組みとして病院が考えているのが、月24件までに分娩予約を制限することと、院内助産院を開設し助産師の力の活用、という。

土屋助産
「合併症がなく良好で、希望される妊婦さんの妊婦健診を、現在2回、助産師外来に振り替えています。これを4回に増やしていきたい。さらに、現在、医師が全ての分娩に立ち会っていますが、正常産を助産師のみで取り上げることができるようにしていくことが目標です」
 しかし、課題は多い。会場では、医師・助産師・保健師がそれぞれの立場から発言、「妊婦さんにも、もっとがんばって欲しい」という声が次々と上がった。 その幾つかを報告する。
 「妊婦さんの家族が、不安だから早く入院させたいと言うのです」
 「バースプランの用紙を渡すが、自分のお産のイメージがなく、白紙のまま『お任せします』という姿勢の妊婦さんが多い」
 「草取り、雑巾がけなど・・・踏ん張る姿勢の作業が日常生活からなくなって、骨盤の形も変化してきていると感じます。横に広い、おしりの大きい安産型の人が減り、脚が長く、つんと上を向いたカッコいいお尻・・・男性型骨盤といいますが、これは難産の人に多い型です。世の中が何でも楽なようにと流れてきて、お産だけ自然に安産というのは難しいのです」
 浅間総合病院の医師も、引き受けきれない分娩を引き受けざるを得ない立場の佐久総合病院のスタッフも、口をそろえて妊婦さんの意識改革を訴えた。
 長野県の伝統もあるのか、地域に踏みとどまり、体を投げうって地域医療を支えてくれる医師が各地にいる。大規模センター病院だけに集約化してもなお、医師が足りず、妊婦・患者が殺到し、パンクするだけだという予測もある。
 マタニティーセミナーや育児支援など、分娩の前と後はがっしり行政がサポートする、と会場の市役所保健師から前向きな宣言も出た。医師は妊婦を見捨てないから、妊婦も頑張って!とのエールも語られた。
 佐久総合病院・小口医師は、以下のように、多くの妊婦に心強いメッセージを送った。
「佐久病院は年間1000件、現在の倍近い分娩規模になる。医師は4人のままです。医療水準も低下し、サービスも低下するでしょう。それでも、引き受けます。救急車も断りません。私たちに力を貸してください。お産は産科医がするものではないのです。地域の配慮・家族の助言、健やかな妊婦さんが安全で自然なお産を守るのです」  
 地域のお産を支えているのは医師だけでなく地域の開業助産師、保健師を初めとした行政、妊婦本人と家族がもつ地域力だ。