妊婦vs飛行機

詳しくは知らないが、妊娠もtermに近付くと、飛行機に乗れなくなるらしい*1。各航空会社ごとにいろいろ制限があって、週数も違う。
飛行機に限らず、妊娠に伴う突発的なeventにはいろいろ苦労させられる。冷酷な言い方をすると、22週未満は流産だから、外出してたりして外で急に陣痛みたいになって出てしまうような場合は、もう仕方がないし、次回は頸管縫縮術をしましょう、というムンテラになるかと思う。36週以降、まあ37週の方がいいけども、36週0日を過ぎてて陣痛来て産まれました、というのなら、児に何らかの問題があったりしなければ、まあ外で産まれてもどうにかなるだろう。現に学校や家のトイレで最近はどんどん産まれてるみたいだし。
問題になるのは、22週から36週までの症例だろう。32週より前なら、児に何らかの呼吸管理が必要になることが多いから、分娩後の処置の早さが児の予後を決める、と言ってもいいかと思う。32週から36週なら、運がよければ挿管なしでいけることもあるだろうし、あんまりストレスかかってなくてツルンと出ちゃった子は、やっぱり呼吸がしんどいか。そんなわけで処置は必要だろう。
何でこんなことを言っているかというと、今日は長いこと飛行機に乗っていたので、つらつらと考えていたのだ。最近では、飛行機の中で、「お医者様はいらっしゃいませんか」と呼びかけがあっても、無視するのがベスト、何かあったときに責任を問われたらやってられん、という時代の流れなもんで、私が飛行機の中で何らかの治療をしなければならない可能性は限りなく低いと思うが、分娩関係だったら、出て行かざるを得ないだろうなぁ〜などと想像していたのだ。で、満期の分娩だったら見てればいいし、着陸までに間に合わないような安産だったらそれに越したことは無いし、時間がかかる分娩なら着陸を待って病院に搬送すればいい。問題は、早産だ。機内で早産になったところで、どうしようもないでしょ。ましてや、26週27週なんてのがツルンと出てしまったら、アタシどうしたらいいのよ。とりあえずサランラップで児を巻くこと、点滴セットがあったらむりやり臍帯静脈に突っ込んどく、くらいは思いつくけど、エルキャスとかでライン取れるわけじゃなし、挿管出来るわけもなし、サーファクタントなんか当然ナイでしょ。んで、着陸までの数時間、何すればいいねん!ということになりかねない。だから、産婦人科医としては、少なくとも同じ飛行機には、22週未満と36週以降の妊婦さんに乗っててもらいたい、というのが本音かと。ブラックジャックとかゴッドハンド輝の北見先生みたいに応急処置グッズを持ち歩いてる新生児科医が常時搭乗しててくれれば別ですが・・・それでも、胎盤早期剥離とかの突発的な事態には対処できないけれど。そこらへんのところは航空会社の方はどう思ってるんですかね?

*1:詳しく知っとけ、という批判は甘んじて受ける。今度よく調べようと思うが。