検察が控訴断念の方向で検討中

様々なソースからいろんな情報が出ているが、網羅してると思われるある産婦人科医先生のブログにリンクしときます。http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2008/08/post_2a2b.html
昨日から、議員連盟の方々が控訴断念を求める要望書を提出したり、まあいろいろあるようですが、この事件の大事なことは、そもそも起訴に値する事案ではなかったということで、医師不足とか医療崩壊とセットにしてしまうと話がややこしくなる。
アンケート等では、「今回の判決には医師側の働きかけが有効だったと思うか?」では「Yes」が圧倒的に多かった訳だが、司法の判断がそんなものに振り回されるハズがないとは思うが、影響がゼロとは言えないだろう。ただ、一般の人たちの中には、医師が団結して医療崩壊をタネに脅している、みたいにしか見えない人もいるだろうから、今回のやり方が健全だったとは私は思わない。ただ、司法も健全かというと微妙で、弁護側が科学的な根拠を呈示しても検察側の証拠を採用して、みたいなことが一部ではあるという話も小耳に挟むし、医療崩壊をネタに脅しをかけなかったら無罪を勝ち取れたか、というのは仮定の話だから分からないな。
K先生ご本人のために、無罪判決が出たことは喜ばしいのだが、医療全体のことを考えれば、徹底的に争って、最高裁判例として確定して頂きたいところではある。本来なら、起訴すべきではない案件を自信を持って起訴したのだから、最後まで責任もってやって頂きたいというか、ここで控訴を断念されると、医療側の正当性が証明されたというよりは、「医者が医療崩壊するって脅したから控訴できなくなった」みたいな解釈になってしまうのがすごくイヤ。国会議員の皆さんが要望書を出されたのも、政治的なニオイが漂ってきて、今回の事件における医療側の正当性がどんどん薄れてしまっているような気がする。
控訴出来ない理由として、症例を挙げられない、証人になってくれる人がいない、ということらしいが、確かに弁護側に日本の周産期の最高峰の方々が来てしまったので、あの先生方に対抗できる人は普通の神経ではいないだろう。ただ、医療界というのもすごくヘテロな集団なので、変わった人はいる。産婦人科学会と敵対してるような医師、あるいはこの事件に対して批判的な意見をブログ等々に書いている医師も中にはいるだろう。そこらへんの先生方へのアプローチは済んだのでしょうか? その人たちも検察側の証人になることを拒んだのであれば、まさに詰んだのでしょう。ただ、業界で睨まれたくないから検察側の証人になれないんだ、学会は圧力団体なんだ、という世論になるように検察やマスコミが誘導しないかどうか、注視する必要があると思う。
ここで裁判が終結してしまうことは、K先生本人のために良いことであったが、日本の医療にとっては、延命処置を施されただけで、何の解決にもなってはいないだろう。この事件で、一部の人たちは、産科医療の悲惨さ、産科医師の勤務の過酷さなどを理解してくれたけれども、一般の方々のブログなどを読んでも、やっぱり分かってない人たちの方が圧倒的に多いし、日本人は完全に崩壊しないと何も学ばない(いやマスコミなどを見ると崩壊しても学ばないのかも知れないが)ようだ。だから、裁判はキッチリと最高裁までいってケリをつける、実際の医療もキッチリと崩壊して頂く、そうすることで新しい医療が始まるのを見たかったなぁ、というのが正直な感想である。