本能

最近、医療関係で色んな人と話をする機会が増えている。医師はもちろん、看護師、助産師、臨床心理士ケースワーカー、その他いろいろな職種の方々。まあ私が医師だから、というのもあるが、医師の意見が一番もっともだ、と思うんだが、他人の意見を聞くことが大事なので、自分からは言葉を発せずに相手の意見を聞いていることが多い。傾向としては、当然のことながら医学に関する知識量は、医師が一番多くて、他の業種の方々は、弱い感じである。そこでどうなるか、というと、妙に感情的な要素でカバーすることが多い。方向性として、例えば患者さんの家庭環境に大きく踏み込んで、医師が苦手としがちなケースバイケースの対応の助けになればいいんだが、感情面を重視して「だから医師の対応は間違ってる!」みたいな話し方をされると微妙だな。医療に関して、間違いとか正解とかは存在しにくい、最適解というのはあるかも知れんが・・・ということを理解してないことがそもそも間違いだと言ってしまえば話は終わるのだが。
感情的な議論の進め方をする人たちが、医学知識を中途半端に持ち出した時が一番危険で、ちょっとでも医師の対応におかしいところがあれば、「こんなに悪い医師がいる!」と鬼の首を取ったように指摘する、というような場面を最近目撃した。直接の被告(?)は私ではなかったので傍観していたが、「この人と一緒に仕事するのは危険だな」と本能で感じさせる瞬間でもあった。
感情的な、心理的な面を重視したケースバイケースの医療というのはすごく大事なんだと思うんだが、それは医学的裏付けがあってのことなんだと思う。医師の中には、ケースバイケースが得意な先生もいるけれども、全員がそうだとは言い難い。最終的に訴訟とかで問題になるのは、医学的なことよりも感情面だから、このあたりをうまく医療全体でカバーしていけばいい結果が得られるんだろうけど、医師以外の業種は敵味方になってしまうこともあるからなかなか難しいな。医学的にも感情的にも完璧にできれば問題は起こらないんだろうけど、それが得られない時に、国民のコンセンサスとしてどっちを取るのか、方向性が見えるといいんだけど。このままだと両方とも失う事態になりかねないのだが。