崩壊への道

私がどんなに、なんちゃって産婦人科医だったとしても、この記事には一応噛みついておかねばなるまい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060815-00000010-khk-toh
東北地方の事情もわからんでもないが。
私も、研修医のときに、麻酔科4ヶ月、NICUにも1ヶ月行かせて頂いた。今でも、その時の経験は、宝物のように輝いている。ただ、ローテーションで得られるのは、その科の事情に精通する、まあぶっちゃけて言えばキモチがわかる、ということであって、技術を習得して実践で使えるようになるということではない。むしろ、こんなにコワイことなら、やっぱり専門家が必要だよな、自分でやるもんじゃないよな、ということが実感されるということであって、どれだけの期間ローテーションするものかは知らないが、たかだか1年以内の研修で、一生涯使える技術が身に付くなんて思うのは、思い上がりも甚だしいのである。そして事故が起こるよ。私も、4ヶ月の麻酔科研修で、自分が一通り出来るようになった気がして、麻酔科医の少ない関連病院に赴任した際、「自分は出来ます」みたいなことを言っていろいろやらせてもらった揚げ句、自分のミスで患者を殺しかけたことがないでもない*1
要するに、少ない人材で何とかしようって発想だろ? キッチリ労働条件を定めて人員を募集すれば、絶対医師は集まるよ。それが出来ないで、奴隷的に働く医師を増やそうって魂胆なら、プログラムが始まる前から終わりは見えてるねぇ。

東北大病院「総合産科医」養成ヘ 緊急時の対応習得
 全国的に産科医不足が深刻化する中で東北大病院(仙台市青葉区)は、小児科と麻酔科に関する知識や技術も備えた産科医「総合周産期実践医(GPP)」の養成に乗り出す。妊娠から出産、新生児期まで母子の健康をカバー、緊急時にも対応できる専門医として、診療科目の枠を超えた人材の育成を目指す。
 研修医が専門技術を身に付ける後期臨床研修(3年)に、GPPのコースを設ける。本年度中に研修プログラムを作り、2007年度から本格始動させる。
 大学病院だけでなく、仙台市内の協力病院の産科、麻酔科、新生児集中治療室(NICU)で研修。新生児の蘇生(そせい)や麻酔時の全身管理などに幅広く対処できる技術を習得する。
 大規模な病院では「周産期母子センター」を設け、産科医と小児科医、麻酔科医が連携して母親や胎児、新生児の異常に対応する体制を整えているが、東北では仙台赤十字病院など仙台市内に3カ所ある宮城県以外は、各県とも1カ所程度しかないのが実情だ。
 センターを設置している病院でも各診療科の医師は慢性的に不足気味。都市部を除く地方では産科医が1人の病院も多く、異常分娩(ぶんべん)など緊急時の対応が課題となっている。
 東北大医学部の岡村州博教授(周産期医学)は「医師が足りない地方で一刻を争うような事態になったときに応急処置ができ、必要に応じて他の病院へ搬送する判断力を持った医師を育てたい。中堅医師の応募も受け入れたい」と話している。(河北新報) - 8月15日7時2分更新

*1:ヒヤリハット報告程度で済んだのは不幸中の幸いである。