記者の目

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kishanome/news/20061026ddm004070125000c.html
ちょっと軌道修正かと思ったけど、やっぱりダメ。

家族は脳の異状を疑い「CT(コンピューター断層撮影)を」と主治医にすがったが

医師が脳の異常について全く疑わなかったような書き方。そして、家族が診断法を選択する時代。医師の裁量権はなし、と。そういえば、内科医がCTを提案したけど産科医が断ったという話はどうなったんですか?

「脳内出血の処置を受けているのに、母乳がたまっているのか胸が張ってね……」。意識のない中、実香さんは母であろうとしたのだ。

生理的な現象を、感情的な表現で煽るのをやめて欲しいな。新聞がこういう書き方をしないで欲しい。どうしても書きければ、「実香さんの体は母であろうとした」くらいが正確かと。

だが、記事化が必要だと思った一番の理由は、医師個人を問題にするのではなく、緊急かつ高度な治療が可能な病院に搬送するシステムが機能しない現状を、行政も医師も、そして私たちも直視すべきだと思ったからだ。

そういう記事になってませんでしたヨ。文章力が無いんですね。文章力が無くても、新聞記者になれるのか。まあ、私も臨床能力の無い医師だから人のことは言えない。

事務局長に『誰のために働いてる』と聞いたら『町、病院のため』と答えたよ」。憲治さんの言葉には、信頼する医師の下で起きた事態へのやりきれなさがあふれていた。

記者が書きたいことはわからんでも無いが、やはり意味の取りにくい文章だな。事務局長への不信なのか、医師への不信なのか、この文章で「やりきれなさがあふれて」いることを表現しきれんだろう。事務は町のために働くと思うけど。医師が、「患者のため」って答えるのが理想のコメントで、それが得られなかったのか? 御家族の方はちゃんと答えていたと思うが、記者が文章にするときにダメダメになったと推察。

で、なんのかんのいいわけして、結局オチが

医療従事者、行政は同じ過ちを繰り返してはならない。

やっぱり人のせいですか。「報道も、同じ過ちを繰り返してはならない。」だと思うんですが。間違ったと思ってないから重症だよな。
たいがいの医師は、自分の間違いには気付いている。その場合、もし外から叩かれまくると、すごく落ち込む。間違いに気付かない医療、報道、政治、そういう人たちは、いくら叩かれても堂々としていられるのかも知れない。自分を守るために、これからは、間違いに気付かないフリをして堂々と生きていかなきゃ時代になっていくのだろうか? 正直者が損をするような時代が、近付いているのだろうか。この堂々とした「記者の目」を読んで、そう思う。
<追記>
「マスコミたらい回し」とは?(その22) 毎日新聞奈良支局青木絵美記者、「スクープ」を自慢→10/26付毎日新聞朝刊にご尊顔の写真入り記事掲載→訂正あり: 天漢日乗
天漢日乗さんはもっと怒ってました。

以下記事。

記者の目:「次の実香さん」出さぬように=青木絵美(奈良支局)
 ◇「人と予算」伴った対策を−−医師だけを問責するな
 奈良県大淀町大淀病院で今年8月8日、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった高崎実香さん(32)が、19病院から搬送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターで男児を出産し、8日後に亡くなった。私は取材を通じ、出産前後の医療システムについて考えさせられた。「財政難」を理由にその整備を怠ってきた奈良県と、深刻な医師不足で激務を強いられている医療現場双方が、「次の実香さん」を出さないよう、今こそ「人と予算」の伴った対策をとるべきだと言いたい。
 取材は8月中旬、高崎さん一家の所在も分からない中で始まった。産科担当医は取材拒否。容体の変化などを大淀病院事務局長に尋ねても、「医師から聞いていない。確認できない」。満床を理由に受け入れを断った県立医科大学付属病院(同県橿原市)も個人情報を盾に「一切答えられない」の一点張りだった。
 搬送先探しが難航した背景は根深い。取材を進めると、緊急かつ危険な妊婦を処置できる「総合周産期母子医療センター」は8県(秋田、山形、岐阜、奈良、佐賀、宮崎、長崎、鹿児島)で未整備だった。危険な母体を大阪府などに送る奈良の県外依存は、ここ数年3〜4人に1人の割合で推移する。県医務課の釈明は、「看護師不足や財政難がある」。ただ、新生児集中治療室(NICU)が40床あることを挙げ「この病床数は大都市を除いて多い」と、整備を急ぐ構えは感じられなかった。
 「だったら、なぜ妊婦は県外に送られたのか」「遺族はこの現実をどう思うか」。実香さんの遺族にたどり着けたのは10月だった。義父の憲治さん(52)は当初、「実香ちゃんの死を汚す結果にはしたくない」と、取材への不安を口にした。「県内の実態を改善させるよう継続的に取材する」と伝えると、憲治さんの話は5時間以上に及んだ。
 実香さんは頭痛を訴えた直後に意識不明に陥った。家族は脳の異状を疑い「CT(コンピューター断層撮影)を」と主治医にすがったが、分娩中にけいれんを起こす子癇(しかん)の判断は変わらず、搬送先探しが優先された。結局、死因は脳内出血。「担当の先生は、息子(実香さんの夫)も取り上げてくれた。『親子でお世話になれるな』と喜んでいた。病院の説明があったとき、事務局長に『誰のために働いてる』と聞いたら『町、病院のため』と答えたよ」。憲治さんの言葉には、信頼する医師の下で起きた事態へのやりきれなさがあふれていた。
 その取材から3日後、実香さんの実父母、夫の晋輔さん(24)にも話を聞いた。「脳内出血の処置を受けているのに、母乳がたまっているのか胸が張ってね……」。意識のない中、実香さんは母であろうとしたのだ。その後、遺影の実香さんと、生後2カ月で愛くるしい笑顔の長男奏太(そうた)ちゃんに対面した。一家は考えた末、取材が殺到するのを「覚悟してます」と、実名と写真の掲載に同意した。
 報道以降、多数のファクスやメールが届いている。「医師の能力不足が事態を招いた印象を与え、一方的だ。医療現場の荒廃を助長する」という医師の声も少なくない。だが、記事化が必要だと思った一番の理由は、医師個人を問題にするのではなく、緊急かつ高度な治療が可能な病院に搬送するシステムが機能しない現状を、行政も医師も、そして私たちも直視すべきだと思ったからだ。居住地域によって、助かる命と失われる命があってはならない。
 NICUに9床を持つ県立奈良病院奈良市)では、緊急処置の必要な妊婦受け入れに対応できるよう、正常分娩の妊婦を開業医に移す自助努力を重ねてきた。また、今回の問題を受け、県医師会の産婦人科医会も母体を産科以外で受け入れるなどの対策を打ち出した。医師の研修制度改正や産科医不足から、県内でも過去2年間で3病院が分娩を取りやめるなど影響は深刻だが、可能な限り、知恵を絞らねばならないと思う。
 一方、県は医師会の対策をなぞるように、県内の民間2病院へ搬送受け入れを要請。だが、これは本来のセンター整備の遅れを補うに過ぎない。現時点で県は、人員確保を含めた体制作りを09年度中としているが、前倒しすることも検討すべきだろう。
 初めて大淀病院に行った時、私は待合室で2カ月先まで分娩の予約が埋まっているとの張り紙を見た。「地域の妊婦がこの病院と医師を信じ、通っている」。憲治さんは「やがては実香ちゃんの死に意味があったと思いたい」と訴えた。失われた実香さんの命を見つめ、医療従事者、行政は同じ過ちを繰り返してはならない。
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毎日新聞 2006年10月26日 東京朝刊