切り口が十分に間違っている

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070909itw3.htm Web魚拓
天漢日乗さん経由で知った記事。私がコメントつける前から続々皆さんからコメントついてるところが、何ともいえず。
要胎(四つ子)の妊娠の場合、妊婦さんのおなかのキャパの問題があるので、30週前後で分娩となる可能性が高い。地区内で要胎が発生したら、妊娠初期からその容体には十分に注目して計画的に進める必要がある。もし、要胎妊婦にNICUを備えた「かかりつけの病院」が無ければ、母体搬送先を見つけられる可能性はゼロだからだ。で、その「かかりつけの病院」としては、分娩可能性の高くなる25-26週前後から母体搬送をシャットアウトしていつ要胎が出て来てもいいように準備しなければならない。医療資源のムダではあるが、安全のためには仕方ない。
そもそも、何で要胎が出来るかという話だが、IVF-ETで卵を2個戻して、そのうちの一つがさらに二つに分かれたために品胎(三つ子)になった2卵性品胎のケースは散見されるけれども、要胎はやっぱり不妊治療施設のマネジメントの問題だろな。妊娠率はいいけど多胎発生率も多いクリニックを知ってるだけに、何とも言えない。
減胎をすることが倫理的にどうか、という議論もあるが、今の医療リソースを考えた場合、もし品胎以上が発生した場合、双胎までの減胎は止むを得ないかな、とも思う。これは責任ある立場の人によく考えて欲しい問題。
そんなわけで、この記事は決して美談では無いし、考えるべきところは沢山あると思う。

母親は「各地で病院の連携を進め、すべての妊婦が安心できる体制を作ってほしい」と願う。

「私は幸運だったけど、失われた命もある。社会全体でこの問題と向き合ってほしい」

この時期に、通常なら兵庫医大に行ってたハズが、他病院に搬送されることになった妊婦の数とかのデータも欲しいところだ。出来ればコメントも。産科医療自体が、壮大なイス取りゲームになる事態も近い。そのイスを取るのは、運が良かった人、ならまだ仕方ないが、声が大きい人、お金がある人、になったとき、みんな納得するのかどうか。
以下は記事。

兵庫の6病院連携、四つ子の赤ちゃん救う

 兵庫県西宮市の兵庫医科大病院で3月、四つ子の赤ちゃんが誕生した。いずれも仮死状態で、中でも女の子は脳出血で危険な状態に陥ったが、病院側は新生児集中治療室(NICU)を四つ子専用として出産に備え、治療を尽くして危機を救った。

 この間、3か月余り、同病院のNICUに代わって、県内5病院が切迫早産などの妊婦を受け入れる支援体制を敷いたという。

 妊婦の病院搬送拒否が問題化する中、医療機関が連携して守った幼い命。元気に育つわが子を抱きながら、母親は「各地で病院の連携を進め、すべての妊婦が安心できる体制を作ってほしい」と願う。

 西宮市在住の角実千代さん(34)と、夫の定男さん(44)の間に生まれた真幸(なおと)ちゃん、竜幸(りくと)ちゃん、幸空(みらい)ちゃん、祐幸(ゆうと)ちゃん。

 実千代さんは6年前に長女(5)を出産したが、その後子宝に恵まれず、別の病院で不妊治療を受け2006年秋、四つ子を身ごもった。多胎児のため、出産時などに高度医療を施す「地域周産期母子医療センター」でもある兵庫医科大病院を紹介された。

 同病院は万全を期すため当時6床のNICUを四つ子専用として出産に備えることを決定。高度医療が必要な妊婦らから入院や診察などの求めがあった場合の受け入れについて、近隣病院に協力を要請した。

 県立塚口病院(尼崎市)や県立こども病院(神戸市)、神戸大付属病院(同)など5病院が応じたことから、兵庫医科大病院は今年2月から重篤な患者を除いてNICUへの受け入れを休止し、実千代さんの出産に備えた。

 妊娠8か月目の3月20日午前、帝王切開で生まれた四つ子は通常の3分の1ほどの1000グラム前後で仮死状態。ただ一人女の子で、3番目に生まれた幸空ちゃんは鼓動が弱く、脳出血が止まらなかった。保育器のほか、人工呼吸器も使っての看護が続き、1か月ほどで全員、健康状態は良好となって7月末、無事退院した。

 2月から4人がNICUを出た5月上旬の間、同医科大病院に代わって他の病院が受け入れた妊婦は20人余り。その多くを診療した県立塚口病院の浜西正三副院長は「近隣同士、協力し合わなければ回っていかないのが実情」と訴える。兵庫医科大病院の皆川京子NICU医長も「医師不足が深刻なだけに病院間連携が大切と痛感した」と話す。

 「幸福を運ぶ四つ葉のクローバー」にちなんで4人の名に「幸」の文字を使ったという実千代さんは今、奈良県などで妊婦が病院に搬送を断られた問題に心を痛める。「私は幸運だったけど、失われた命もある。社会全体でこの問題と向き合ってほしい」

 大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸副院長(周産期医療)の話「多胎児は死産のリスクも大きく、万全の体制で臨むことが望ましい。今回のケースは現場が主体となって構築した医療機関のネットワークが奏功した好例だ」
(2007年9月9日10時19分 読売新聞)