軌道修正

ガンで患者さんが亡くなるのは、当然とは言わないがある程度予想がつくことで、医師をやっていると頻繁に出会うこと。最初の1例目は多少ショックを受けるが繰り返すうちに慣れていく。慣れないと仕事にならないから。子宮内胎児死亡(IUFD)は微妙だな。その原因にもよるが、突然のことが多いので、妊婦さんは間違いなくショックだろうが、医師もあんまりいい気持ちのするものではない。場合によっては、IUFDも産科医を辞めるきっかけにはなり得るだろう。
母体死亡っていうのは、ご遺族にとってショックなのは間違いないが、医師にとっても相当ショックだ。日本国内では、年に100例まではいかないが、少なくとも50例以上はあるハズで、その人数分だけ衝撃を受けた産科医がいるんだろうな、と思う。
例の件をきっかけに、また週刊誌とかが医療問題を取り上げ始めてる。今週は新潮と文春が頑張っていて、まあいろいろ感想もネット上では見かける中、新潮の方がマシという評判もあるようだが、私が読んだ感想からいえば、どっちも同じようなもんだ。
しかしだな、あんな風な取り上げられ方をしたら、私だったらとっても凹むだろうな。で、方針変更を絶対考えるだろう。いくら記者会見でご遺族の方が思慮深いコメントをされたとしても、マスコミがあんな書き方をするんだから、結局同じことになってしまう。医師になってしまうと、他の仕事にはなかなか変わりにくいとか、そういうところは他の職業と同じ。若い方が転職もしやすいし。そんなわけで、産科医が、その年齢別にどう進路変更するか考えてみた。

高齢の産科医→医師自体を引退する。
中堅の産科医→分娩取扱を辞める。
若年齢層の産科医→可能なら科を変える。
初期研修に近い産科医→科を変える、医師を辞めて他の職を探す。

考えられるのはこんな感じかと。実際、日本中でそういう変化が起こっているようですし。
もう一つ、その週刊誌には、搬送元の院長のコメントが取り上げられていて、これは本人の意図なのか週刊誌的に対立を煽ろうとしているのか実際のところは分からないんだが、かなり木刀病院に対して好戦的なコメントをしていた。「地元医師会も(この対立を)応援すると言っている」みたいな雰囲気のコメント。なんだかなぁ、という感じ。そんな中、木刀さんは週末の当直を二人にします、とのこと。これもなんだかなぁ、という感じ。全てにおいて方針が中途半端なんだな。例えば、この件にしても、一回断っておいて後で受け入れたら、最初から受け入れろよ、ってことになるだろうから、最初からムリしてでも取るのか、最後まで取らないかのどちらかであるべきだと思うし、今回の週末当直の方針変更にしても、どうにかやりくりして週末二人体制に出来るんだったら、最初からやれよ、という話だろうし。本当にムリなんだったら周産期センターの看板を下ろすべきなんだと思うし。そりゃいろいろしがらみがあって大変なことはあるんだろうけど、ダメならダメで完全撤退するとか、何かを徹底的にやらないってのは、判断が甘いと思う。医療という厳しい判断を求められる現場で、それはどうなんだよ、と思わんでもない。