産科、辞めます。

いつもお世話になってますmariboo's blog: ひこにゃん人気で知りましたよ。こちら不妊治療・体外受精・人工授精|医療法人オーク会なんですが、分娩取り扱いをやめるそうで。で、その理由ってのが分娩取り扱い終了のご案内|大阪 医療法人オーク会に書いてあるのだが、これがなかなかハッキリしててよい。ここのクリニックの中の人が、一時期某医会のメーリングリストで暴れ回っていた*1のだが、ここのHPに書いてあることはまあマトモだよな。民間のクリニックなので、採算のとれる部門だけ残すという経営方針も間違いではないし。
このままだと、分娩は、選ばれた人のみが快適に過ごせるゴージャス産院と、飛び込み分娩・その他何でも受け入れの公立病院の二極化が進みそうな予感。いいか悪いかはともかくとして、妊婦さんの選択肢は狭まるばかりだな。ここでマスコミ的には、「自然」を標榜する「助産院」の登場となるのだが、「どうする?日本のお産」プロジェクト - ホームページの質問9あたりに書いてある医師の発言がすべてだと思う。落ちると読めなくなるので貼っておく。

 自然というものがどれほど残酷で厳しいものなのか、もっと深く考えるべきである。アンケート結果をみると、自然なお産を望む一般の方々、中には助産師の方もいるようですが、自然というものを本当に理解しているのでしょうか?その方たちは自分の子供が風邪をひいたときには、当然のごとく病院を受診させ薬を処方してもらっているでしょう。しかし、これは自然なことですか?弱い個体は淘汰される。これこそが本当の自然ではないでしょうか?医療というものは、もともと自然に反する形で発展してきたものです。病気になった人の苦しみ、周囲の人々の悲しみを取り去ることを目的として発達してきたものです。周産期医療の発達も同様です。1950年代の妊産婦死亡率は現在の約30倍も高いものでした。現在と比べると自宅出産が多く、無責任なマスコミが讃える自然なお産が行われていた時代です。お産による妊婦、新生児の死亡、周囲の悲しみをできるだけ減らすことを目的に、産婦人科医師の先達は不眠不休で頑張ってきました。その結果、自然なお産からは程遠いものになったかも知れませんが、「お産は病気ではない」と勘違いをした発言をする医療関係者がでるほど安全が確保されるようになりました。ですが産婦人科の医療現場で働く人間の実感としては、その[安全]ですら非常に不安定なものです。保障がない、1分先にはどのような悲劇が待っているかわからない不安に怯えながら、出来る限りの万全の体制でお産に臨んでいます。産科を扱う医師が加速度的に減っていき、残された産科医師への負担が急速に大きくなっていく環境で、現場は疲弊しきっています。そして、また産科をやめていく医師が増えていきます。我々に余裕があれば、様々なお産の形に対する要望に応えられるのかも知れません。しかしながら、もうそのような状況ではなくなってきています。ですから、自然なお産を望む妊婦さん、自然なお産を勧める助産師さんにお願いです。自然の厳しさを理解したうえで自然なお産を選択されるのであれば、どのような結果が待っていようとも最後まで自分たちの責任で行ってください。私自身はどこでお産をしても構わないと思っています。ただ、どうしようもない状態になってから、産婦人科に放り出すのはやめてください。それに応える余力はもうありません。【九州/産婦人科医師】

上で挙げたクリニックのも貼っとく。

分娩取り扱い終了のご案内
 当院は、2000年の開院から、「産科のオーク」として多くの妊産婦様のご支持をいただいて来ました。しかし残念ながら、2007年3月末をもって、分娩の取り扱いを終了することになりました。これには、次の理由があります。

1. 厚生労働省看護課長通知によって、看護師による分娩時の内診が禁止されたこと。
2. 信頼関係のある患者様ばかりではなくなっていること。
3. 産科医療のシステムが破綻しつつあること。

1.  日本中の多くの産科施設において、数十年も前から分娩時の内診は産科医の指示によって看護師が行ってきました。法文に明白な規定がないものの、当然に合法の診療行為とされてきました。しかし、平成16年になって、厚生労働省は突然「看護師による内診を禁止する」という通達を出しました。あまりに実状とかけ離れた通達であり、関係団体が再三にわたり撤回を申し入れたにもかかわらず、行政は指導を強行し、刑事事件にまでなっています。
2.  私どもは、プライベートのクリニックであり、信頼関係の築ける方においで頂きたいと考えています。私ども医師も看護師も、生身の人間です。失敗もしますし、もっと知識や技術を持つ医師や看護師が、他の病医院に大勢おられます。誠意を尽くし、全力を尽くすことだけが、私どもが患者様にお約束できる、唯一のことです。
 しかし、本当なら「よくしてくれた」と言われこそすれ、クレームを受けるいわれがない場合でさえ、「納得いかないから説明せよ」と激しい非難を受けることがあります。以前は、このようなケースは稀でしたが、最近、急増しています。近隣の病医院が産科を閉鎖していく中、仕方なく私どもを受診される方が増えているためだと思います。しかし、このままでは、当院も防衛的対策をとらざるを得ず、私どもの考える、信頼関係を前提とした安全な産科診療のスタイルを続けることが、困難になってきました。
3.  さらに深刻なことは産科医療のシステムが崩壊しつつあることです。ご存知のとおり、産科医、小児科医の不足で、緊急時の受け入れ先がなくなろうとしています。ここ半年ほどで、緊急搬送の受け入れを次々と拒否され、いくつもの病院に連絡をとらなければならないことが増えています。

  信頼を置いていただいているわけではない方に、何か起これば、刑事、行政罰の科せられる違法状態に置かれたまま、医学的リスクが更に高まっている産科の診療を続けることは、私どもにはできません。
 当院が分娩をやめることで、産科医療システムの崩壊が一層進むことになるかもしれません。しかし、医療機関へのあまりに理不尽な批判、制裁が相次ぐ中、私どもにはこれ以上の努力を続けることができず、苦渋の選択をしました。これまで、当院をご支援いただいてきた皆様には、誠に申し訳ございませんが、ご理解のほどをよろしくお願いします。
 今後、従来からのもう一つの専門分野である不妊治療、特に体外受精、顕微授精に、一層の力を入れることになります。培養ラボラトリーの拡張と設備、人員の増強を行い、体外受精センターを拡充します。入院設備を有することで、切迫流産や不育症の入院治療に対応が可能です。
 また、不妊症の大きな原因となる子宮筋腫や卵巣のう腫などの手術治療には、サージセンター(手術センター)を設置し、さらに積極的に取り組んでいく予定です。
 全身管理のできる重装備の設備と、充実のアメニティを生かし、オーク住吉産婦人科は、高度不妊治療センターとして生まれ変わります。皆様のご理解とご支援を賜りますようにお願い申し上げます。
 もちろん、ご予約の皆様につきましては、最後まで責任をもって診療させていただきます。ただ、上記の点をくれぐれもご理解いただいた上で、当院をお選びいただきますように、お願い申し上げます。予定日超過2週間までは、分娩誘発を行わず自然に経過をみるため、分娩のご予約をお受けできるのは、予定日が3月15日までの患者様となります。
 最後のお一人が無事にご出産を終えられるまで、現在の態勢を維持し、職員一同、全力を尽くす所存ですので、このまま当院でご出産予定の皆様も、どうぞご安心下さい。

*1:私は留学に伴い脱会したのでその後のことは知らない