バーディーバーその後

何だか医龍2を見ながら医療知識のリハビリをしてる気分。不規則抗体とか、懐かしいな。ベントール手術なんて、講義で習った名前だけど、自分やらない手術だからすっかり忘れてるって。自分やらないって、他の手術ならやりそうな言い回しですけど、心臓自体触らない科ですから。
ドラマの中で、患者は、「昔、輸血したからその不規則抗体っていうのができたんだよね」みたいなことを言っていた。その大けがの時、お母さんが病院に連れてってくれたんだよね、みたいな話で流れていったが、なかなか医学的には大事なポイントだろう。特に、産婦人科医にとっては、Rh不適合妊娠のシステムとも関係なくは無いので、復習しておかねばなるまい。Rh因子 - Wikipediaが一番シンプルで分かりやすいかもね。以下、解説。間違ってたら補足よろ。
バーディーバー(-D-)ってのは、Rh因子を構成するC,D,E抗原のうち、普通はCとEはCまたはc, Eまたはeの形で存在するものが、全く存在しないタイプらしい。で、この「-D-」である人に普通の人の血液を輸血(初回輸血)すると、普通の人には、C抗原とかE抗原とかが存在するわけで、輸血された血液の中のCとEは-D-の人にとっては「敵」だから、抗体(抗C抗体、抗E抗体)が産生されるわけですね。で、この抗体が不規則抗体として検出されてると。この抗C抗体、抗E抗体が、次回の輸血の時に輸血された血液中のC抗原とかE抗原を攻撃にいってしまうので、輸血された血液が溶血して意味なくなっちゃう、ということですね。
これは、Rh(-)の妊婦がRh(+)の子供を妊娠した時に、産後無処置だった場合の経過と同じなわけです。妊娠中や分娩時に、児の血液成分が母体に入り込むことで、Rh(-)の妊婦はRh(+)の攻撃(この場合はD抗原ね)を受けます。んで、抗D抗体が産生されてしまうわけで、次回の妊娠時に、Rh(+)の子供を妊娠すると、母体の抗D抗体が胎児のD抗原を敵と認識して、やっつけに行ってしまう、ということで。対処方法は、妊娠28週頃と分娩後72時間以内に抗Dグロブリン製剤を母体に投与することで、抗D抗体の産生をブロックするというもの。もちろん、生まれた第一子がRh(-)だったら、Rh(+)の攻撃はおこらないので分娩後のグロブリン製剤は必要なしです。
昔、産婦人科医だったころ、Rh(-)AB型の妊婦さんのお産があってね。大量出血したらどうしようと思ったけど、血液センターに在庫とか事前に問い合わせちゃったりもしたけど、まあそんな必要なく無事にツルっと生まれてよかったんだけど、この抗Dグロブリン製剤を打つか打たないかの問題で、児の血液型を緊急に判定する必要があった。これがうまい具合にゴールデンウィークの分娩で、検査部の血液専門の人呼び出して血液型確定させるの大騒動だったような記憶が。だって分娩後72時間以内だし。普通の土日だったら何とかなったかもだけど。
ああ、免疫系、血液内科系、いまでも苦手だなぁってのがエントリ書きながら痛感ですよ。書けば書くほど、ニセ医者ブログへの道まっしぐらって感じで。
<追記>11月9日の記事に記載した追記。

赤血球表面にD抗原のみ発現(C, c, E, eはなし)→-D-、Rh型としては(+)判定されてしまう。
赤血球表面にD抗原も無い(C, D, E全部なし)→敢えて書くなら-d-、Rh型としては(-)判定されるだろうけど、一応Rh(null)型という名前がついてる。「バーディーバー」とは言わないと思う。

トラバされた先の女医さんを名乗るブログでの記載が微妙に間違ってると思ったので追記してみた。専門的な内容について書く時は、余程気をつけないとなぁ、と痛感させられる。世間は医者が書いてるからホントウだ、と思うかもだからなぁ。